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プラごみ回収しません 市から通知あったら?

2019年6月20日 14:29 NHK NEWS 

「市民の皆さま、当市は4月1日をもって家庭からのプラスチックごみの回収を取りやめます。理由は中国による廃プラスチックの受け入れ停止です」
自宅に突然、こんな通知が届いたらどうしますか?今、アメリカではこうした通知に困惑する人たちが増えています。日本にとってもひとごととは言えません。

埋め立て処分に戸惑う市民

アメリカの家庭では日本同様、分別したプラスチックごみなどの資源ごみを週に1度、ごみ置き場に置くと、回収車が収集していくのが一般的です。

プラスチックごみはその後、業者を通じて中国などに資源ごみとして輸出されてきました。

ところが異変が起きています。中国が環境汚染を心配して、去年1月1日からプラスチックごみの輸入を禁止する措置を発動。それから1年余りがたち、冒頭のような通知を出す自治体がアメリカで広がっているのです。

南部バージニア州スタントン市もそのひとつです。首都ワシントンから車で2時間ほどの人口約2万5000人の小さな街を私は4月に訪ねました。

その直前に、市はプラスチックごみの回収を取りやめました。住民のマヤ・カルツェバさん(41)は、この状況を「危機的だ」と表現します。
11歳の娘と5歳の息子、それに夫の4人家族のマヤさんは、子どもたちの弁当を食品保存用のプラスチック袋に入れて持たせています。かつてのように使い捨てではなく、何度も洗って繰り返し利用するようになりました。
プラスチック容器に入ったものをなるべく買わないようにしていると言いますが、それでも限界があります。冷蔵庫の中を見せてもらうと、牛乳やヨーグルトなどはプラスチック容器に入っていました。

回収再開のめどは立たず

スタントン市は、プラスチックごみを捨てる場合には、「一般ごみ」として出すように指示しています。しかし、日本のようにごみ焼却施設がないため、結局は埋め立て処分されることになります。

マヤさんはそのことに強い抵抗感があります。ひとまず台所の流しの下に大量のプラスチックの袋や容器をため込んでいます。
「私は、プラスチックごみを『資源ごみ』としてこれまで捨ててこられたのは、外国のおかげなのだと、全く気付かずに過ごしてきました」と語るマヤさん。
当面は、リサイクルを続けている近隣の自治体の知人のところに持っていこうと考えています。

スタントン市は「中国が新たな規制を導入したことによって、資源ごみとしての廃プラスチックの需要が激減したためだ」と回収断念の理由を説明。

「いずれはリサイクルの復活を検討したい」と市民に理解を求めているものの、引き受けてくれる業者のめどは立っていません。

世界最大のプラごみ輸出大国

アメリカは言わずと知れたプラスチックごみの世界最大の輸出大国。この10年間、毎年160万トンから210万トンを海外に輸出してきました。

禁輸措置の直前の2017年には全体の33%が中国向け。中国政府の発表を受けて2017年から2018年にかけて輸出の総量は約60万トン減りました。アメリカではこの60万トンが行き場を失った計算です。
その一部が中西部イリノイ州環境保護団体の敷地に積み上がっていました。プラスチックごみの回収をしない自治体が増えるなか、市民がドライブスルーのようにして車列を組んでごみを預けに来るのです。
「埋め立て処分は耐えられない」として、中には100キロ以上離れた地域からごみを持ち込む人もいるそうです。以前は洗浄して資源として売却することで団体の運営資金にもなっていましたが、今では反対に引き取り手数料を要求される始末。

で、この積み上がったプラスチックごみはいったいどうなるの?と尋ねると、広報担当のビバリー・ブロイェルズさんは「今のところ打つ手はないし、この先の展望も全くありません」と途方に暮れていました。

環境先進都市サンフランシスコの取り組み

多くの市民が困惑するなか、注目されているのが西海岸のカリフォルニア州サンフランシスコ市。ここは全米きっての環境先進都市です。

週末には14歳と11歳の娘とエコバッグ持参でお出かけするという、スプリング・ウッティングさん(45)が向かったのは「ファーマーズ・マーケット」と呼ばれる生鮮食料品などを扱う屋外の市場。
私なら透明なビニール袋に入れるであろう野菜やキノコ類を布製の巾着袋に詰めていました。自宅の冷蔵庫の中もごみ箱の中も、プラスチック類はほとんどありません。

スプリングさんは量り売りであらゆる商品が買える市内の「レインボー・グローサリー」の常連客でもあります。

はちみつやオリーブオイル、ごま、小麦粉はもちろん、シャンプーや食器用洗剤、さらにドッグフードまで量り売り!
自宅から持ってきた容器の重さをまずは測ります。その重さをシールに書いて容器にペタ。好きなだけ容器に入れたら商品ごとに割り当てられた番号をシールに書いてこれまたペタ。レジでは容器の重さを差し引いて計算します。

これって面倒では?スプリングさんは「確かにちょっと面倒ですが、その価値はあります。慣れればどうってことないわよ」と言います。

3つのRから4つのRへ

2007年に全米でいち早く使い捨てのレジ袋の提供を禁止したサンフランシスコ市。いま、ごみ処理業者のリコロジー社と連携して進めているのが「4つのR」のキャンペーンです。

▼ごみを減らす「Reduce」
▼使い続ける「Reuse」
▼再利用する「Recycle」

この「3つのR」が大事なことは日本でも知られていると思います。

サンフランシスコ市はこれに
▼拒否を意味する「Refuse」を4つ目の「R」として市民に呼びかけています。

ごみを根本的に減らすため、プラスチック容器を使っている商品を買うことを「拒否」することで、企業側に重い腰を上げさせ、売り方・買い方の根本から変えていこうというわけです。

市内のごみを一手に引き受けるリコロジー社の施設には、センサーを備えた最新の分別機があります。この機械で、プラスチックごみだけでも8つ(透明なペットボトル、色つきペットボトル、発泡スチロールなど)に細かく仕分けて徹底的に洗浄し、資源として価値を高めています。

その結果、埋め立て処分はほとんどせずに済んでいますが、資源ごみの買い手を確保することは難しくなりつつあります。

リコロジー社で27年間、一貫して広報を担当しているロバート・リードさんは、ポケットからドル札を出して「企業に行動を変えさせるには、消費者がお金の力で売り方を変えさせるしかありません」と力説しました。

日本も同じ問題に直面

この問題、日本にとっても切実です。実は日本も、プラスチックごみの輸出大国です。

長年、輸出量でアメリカに次ぐ2位。人口は半分以下ですが、日本の輸出量は去年、アメリカとほぼ同じ100万トン余りでした。前の年から減った約42万トンが行き場を失った計算で、国内にたまり続けているという点はアメリカと同じです。

環境省によりますと、中国の輸入禁止を受けて、すでにコンビニやオフィスなどの事業者から出るプラスチックごみの保管や処理に影響が出ています。

現時点では、一般家庭への直接の影響は少ないと見られていますが、処理しきれないごみの量は増え続けていて、処理にかかる輸送費や焼却費などが値上がりして事業者への負担が増しているのは間違いありません。

アメリカではこの時点で耐えきれずにギブアップする事業者が相次ぎました。日本では、本来は家庭ごみの処理を行う施設を開放して処理しようとしていますが、施設を管理する自治体や住民の理解を得られるかは不透明な情勢です。

その包装、本当に必要ですか?

日本とアメリカ共通の課題のプラスチックごみ。不法投棄などで海を漂流する「海洋ごみ」をこれ以上、増やさないために私もできることから始めました。

水はペットボトルではなく水筒で、スーパーに行く時にはエコバッグ持参。皆さんもそのプラスチック包装や容器、本当に必要か、考えてみてはいかがでしょうか。