キチンと生きられない人が増えると世界が狭くなる

自己管理を出来てないと周りの罪もない人が迷惑するよね。

まぁ、自分さえよければ良いんだろうね。

 

 

そういうヒトがマンションの中で?消息不明なるんだね。

 

 

マンションの課題「所有者不明部屋」管理費値上げも 対策は

2022年11月18日 15:00 NHK NEWS

人知れず、マンションの部屋の住人がいなくなる。

今、そんなケースが相次いでいることがわかってきました。

この問題で、住人の生活にも影響が。

マンションの管理費の値上げや、建て替えができないという事態にもつながっているのです。

建物と居住者の「2つの老い」が進むと言われる各地のマンションで、何が起きているのでしょうか。

「住人が消えた」部屋

「いつ居なくなったのかも、分かりませんでした」

築およそ50年、千葉県内にあるマンションで暮らす住人のことばです。

見せてもらったのは去年、マンションのある一室を撮影した動画。

床が抜け、天井が剥がれ、床にものが散乱しています。

一方で、布団や冷蔵庫などはそのままになっていて、生活の跡も残っていました。

この部屋には、高齢の男性が住んでいると思われていました。

しかし、いつからか、連絡がとれなくなってしまいます。

部屋の所有者がどこにいるのか、わからない状態になったのです。

亡くなったことすらすぐには分からない

この部屋の片づけにあたった、佐藤学さん(69)です。

親子2代、およそ半世紀にわたってこのマンションで暮らし、今は管理組合の理事長を務めています。

マンション管理の厳しい現実を知ってもらいたいと、取材に応じてくれました。

先ほどの部屋の居住者を佐藤さんらが調べた結果、住んでいた男性は、7年ほど前に別の場所で亡くなっていたとみられることがわかりました。

マンション管理組合 理事長 佐藤学さん
「同じマンションでも、ドアを隔てた先のことは分からないものです。調べ始めたら、亡くなっていることが分かった。連絡がとれず所有者が分からなくなってしまっていた」

所有者が分からない 管理費の滞納も

部屋の所有者が不明になったこの事態は、マンション管理にとって、大きな問題になっていました。

直面したのが、「管理費の滞納」です。

分譲マンションでは、適切な維持修繕が欠かせません。

共用部分の日常的な手入れや、定期的な修繕工事を怠ると、老朽化が一層進んでいきます。

こうした修繕の原資となるのが、所有者が支払う「管理費」や「修繕積立金」ですが、所有者がわからないと、このお金が支払われなくなります。

先ほどの部屋のケースでは、滞納額は80万円余り。

遅延金も含めると100万円以上になりました。

マンション管理組合 理事長 佐藤学さん
「管理費を支払う人がいない。放置すれば未納が続くことになりますし、部屋はさらに傷みます。マンションの価値を保つためにも、そのままにはしておけませんでした」

「所有者不明」解決に数百万 管理費の値上げも…

滞納された100万円以上のお金。

男性には兄弟もいましたが、「相続放棄」していたことがその後の調べで分かり、請求すべき相手がいなくなっていました。

しかたなく佐藤さんたちは、財産管理人を立て、部屋の資産整理を進めましたが、結局、未納分の管理費は回収できませんでした。

そればかりか、相続人の調査費用や、財産管理人の選任申立費、それに報酬など、さらに100万円近くのお金がかかりました。

そして、これらはすべて、マンションの管理組合の予算から出さざるをえませんでした。

120の部屋があるこのマンションですが、ほかにも所有者がいなくなったケースが2件あり、数百万円の費用がかかっています。

このマンションの管理組合は修繕のための費用が不足する事態となり、節約のために管理会社を解約。

一部自主管理に移行しました。

さらに管理費も、ひと月当たり3500円の値上げに踏み切りました。

住まいを守るために、必要な選択だったと佐藤さんは話します。

マンション管理組合 理事長 佐藤学さん
「管理費の滞納は、元に戻すのに膨大な時間と、お金と、手間がかかります。修繕費用がかさむ年数の古いマンションにとって、大きな痛手です。私はここで人生の最後を迎えるつもりですし、ここを『ついの住みか』と考えている人はたくさんいます。だから、全力でここを守りたいし、守る覚悟です。所有者不明の問題については、問題が発生したらすぐに対処できる仕組みや実情に即した財産管理の在り方をぜひ、検討してほしい」

マンションの「2つの老い」 1割超に「所在不明」部屋

マンションの財政に直結する、「所有者不明部屋」の問題。

2018年の国の調査によると、マンションの部屋の所有者の所在が分からなかったり、連絡が取れなかったりする部屋は、築年数の古い建物ほど多くなる傾向があります。

1979年以前に建てられたマンションでは13%余りに達しています。

その原因は、建物が古くなり居住者が高齢化していく、いわゆる「2つの老い」と呼ばれる現象とみられます。

築40年以上のマンションの戸数は、2021年現在、115万戸。

その数は今後急増し、10年後に2倍、20年後の2041年には425万戸と4倍近くに急増する見込みです。

「所有者不明部屋」も、今後さらに増えていくとみられています。

もう1つの問題 建て替えが進まない

マンションの「所有者不明部屋」の問題は、財政以外の問題にもつながっていました。

東京都心の一等地に建つ、築およそ50年の小規模マンション。

老朽化であちこちに亀裂が入り、外壁の落下も相次ぐなど、周囲が危険な状態にもなっています。

このマンションでは、資産価値の向上を見込めるとして、所有者たちが建て替えを検討しています。

しかし、それを阻んでいるのが「所有者不明部屋」の存在です。

およそ1年前から、行方が分からないという住人。

ポストは、郵便物があふれる状態になっていました。

数か月前、警察に依頼して部屋の中を確認してもらいましたが、誰もいなかったといいます。

所有者不明で合意形成に支障も

なぜ、建て替えが進まないのか。

現在の区分所有法では、マンションの建て替えを行う場合、「区分所有者」の意思を確認し、原則として5分の4の合意を得る必要があります。

しかし、所在が分からないこの住人の意思確認ができず、合意形成に支障が出ているのです。

マンションの管理組合は、今、所有者の行方の特定と滞納が続く管理費の回収のため、弁護士と準備を進めています。

マンション管理組合 理事長
「一つの建物に多数の人が暮らすマンションでは、建て替えや大規模修繕など重要な決定をするためにはコミュニケーションが欠かせない。しかし不明者が出るとそれすらできず、大変困る。今回でいえば、外壁落下で周囲が危険な状態にもかかわらず、前に進めない。早く解決できる枠組みや支援体制を整えてほしい」

管理費滞納解決の代行業者も登場

「所有者が不明な部屋が発生し、どうすればいいか分からない」

こうした声が増える中、住人に代わって不明者の特定や滞納された管理費の督促を代行する業者も現れています。

設立4年目のこの会社には今、マンションの管理組合から多くの相談が寄せられているといいます。

取材に行ったタイミングで対応していたのは、部屋の所有者が行方不明になってから相当な年数放置され、滞納額が積み上がっているケースでした。

月々の管理費の滞納が積み上がり、その総額は120万円以上に上っていました。

会社は費用回収のため、不明者の行方を登記簿などからたどり、時には現地調査も行って相続権者を探します。

必要に応じて、費用回収のための裁判を行うこともあるといいます。

VAMOS 佐藤永進代表
「戸数が数十程度の比較的小さなマンションからの相談が多く、管理費滞納による『管理不全化』の危険にさらされているところが増えている。居住者の老いが進む中、管理組合の活動がぜい弱になっていることも相談増加に関係していると思います。建物と居住者の『2つの老い』の進行とともに今後問い合わせは増えていくとみている」

いったいどうすれば? 専門家に聞いた

こうした「所有者不明部屋」の問題、住人はいったいどうすればいいのか?マンション管理の問題に詳しい横浜市立大学の齊藤広子教授に聞きました。

齊藤教授は、「所有者不明」の住戸が増えるというのは想定されていなかった事態で、現在の法規制を抜本的に変える段階に来ているとしています。

そのうえで、マンションの住人の高齢化が進む中、管理組合のできる予防策として、以下の対策をすすめています。

マンションの「所有者不明」管理組合の予防策
・長期不在になる場合の届け出の徹底を促す その際には緊急の連絡先の届け出も
・所有者、居住者の変更届の提出も順守
・毎年開かれる総会の開催に合わせ、所有者名簿、居住者名簿の確認、更新を必ず行う
・滞納者が出たらすぐに把握できるよう、修繕積立金・管理費の滞納状況の把握を

横浜市立大学 齊藤広子教授
「所有者不明の部屋を出さないためには、二重、三重にも住人の状況を確認できるすべを整えておくことが大切です。そのためには、居住者どうしが日頃からコミュニケーションを取り、相互に助け合える環境を整えていくことが、居住者も建物も老いる中、マンションを維持していくためにとても大切です」

マンションの所有者不明問題 国も法改正視野に議論

管理不全の深刻化を招きかねないマンションの「所有者不明部屋」の問題。

空き家や土地については、少しずつ対策が講じられてきましたが、マンションでは法的な整備がほとんど整っていないのが現状です。

このため国は、法改正も視野に対策の検討を進めています。

具体的には、区分所有法を見直し、
▽建て替えなどに必要な多数決の要件を緩和する案や、
▽所有者不明の部屋に特化した財産管理制度の創設などについて議論が進められています。

法務省民事局
「マンションの区分所有者の財産権にも関わる大きな見直しのため影響も大きく、慎重に議論を進めている。ただ喫緊の課題だと認識しており、可能なかぎり早く議論を進めていきたい」

国土交通省住宅局
「建物と居住者の『2つの老い』が進む中、重要な点と認識している。区分所有法を所管する法務省とも連携し、社会状況の変化に対応した対策の検討を進めていきたい」

あなたのマンションの課題は…

日本では全人口の1割、およそ1500万人が分譲マンションで生活していると言われています。

築40年以上のマンションは今後急増が見込まれていて、今回取り上げた「所有者不明部屋」の問題以外にも、さまざまな課題が出てきています。

建物と居住者の「2つの老い」が進む中、住まいを守るために何が必要で、どうすればよいか?NHKは、マンションの管理をめぐる課題について取材を続けていきます。